適応障害

適応障害は、ストレス関連障害の中でも最も代表的なものです。職場での異動、転職、転居、人間関係の変化など、はっきりと特定できるストレスが原因となり、気分の落ち込み、不安、怒り、焦りといった情緒的な問題や、遅刻、欠勤、暴飲暴食、引きこもりなどの行動面の問題が現れます。

症状はうつ病と似ていますが、適応障害は原因となるストレスから離れると症状が和らぐ傾向があるのが特徴です。ただし、ストレスが続いたり、うまく対処できなかったりすると、うつ病などに移行することもあるため、早期の対応が大切です。DSM-5では、ストレス因の始まりから3ヶ月以内に症状が出現し、ストレス因がなくなってから6ヶ月以上は症状が続かない、とされています。

心的外傷後ストレス障害 (PTSD)

命の危険を感じるような出来事や、強い精神的衝撃を受ける出来事(トラウマ体験)を経験した後に、深刻な苦痛が続く状態です。災害、事故、暴力、虐待などが原因となり得ます。

PTSDの中心的な症状は以下の4つです。

  • 再体験(侵入症状):トラウマ体験の記憶が、意図せずフラッシュバックとして蘇ったり、悪夢として繰り返し現れたりします。
  • 回避:トラウマを思い出させるような場所、状況、人物、会話などを無意識のうちに避けるようになります。
  • 認知と気分の陰性変化:トラウマ体験について思い出せなくなったり、物事への興味や関心を失ったり、他者から孤立していると感じたり、持続的に否定的な感情(恐怖、怒り、罪悪感など)を抱いたりします。
  • 過覚醒:常に神経が過敏になり、リラックスできない状態です。ささいなことで驚いたり、イライラしたり、警戒心が強くなったり、不眠になったりします。

急性ストレス障害 (ASD)

トラウマ体験の直後(3日後から1ヶ月以内)に、PTSDと同様の症状が現れる状態です。PTSDの前段階と位置づけられることもあり、多くの場合、時間の経過とともに症状は改善しますが、1ヶ月以上続く場合はPTSDの診断が考慮されます。

ストレス関連障害の治療

ストレス関連障害の治療の基本は、原因となっているストレッサーを特定し、それを取り除くか、距離を置くための環境調整を行うことです。その上で、心理療法や薬物療法を組み合わせて行います。

1. 環境調整と休養

まず、心と体を休ませることが最も重要です。可能であれば、職場や学校などのストレス環境から一時的に離れる(休職・休学など)ことも有効な治療となります。診断書の作成についても、お気軽にご相談ください。

2. 心理療法(カウンセリング)

カウンセリングを通して、ご自身のストレスへの対処法(ストレスコーピング)のレパートリーを増やしたり、出来事の受け止め方を整理したりすることで、ストレスへの抵抗力を高めていきます。PTSDに対しては、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)などの専門的な治療法も行われます。

3. 薬物療法

不安、不眠、気分の落ち込みなどの症状が強い場合には、対症療法として抗不安薬や抗うつ薬(SSRIなど)、睡眠薬などを補助的に用いることがあります。あくまで心身の負担を和らげ、休養や心理療法に集中しやすくするためのものです。