1. 職場のストレスとこころの健康
仕事は本来、生きがいや達成感を感じられる場であるはず。でも、現実にはストレスだらけの職場も多く、心がすり減ってしまう方が増えています。特に働き盛りの30〜50代は、仕事の重圧、睡眠不足、人間関係の摩耗といった要素が積み重なり、心身ともに限界を迎えがちです。
うつ病や不安障害、パニック発作、適応障害、そしてアルコール依存など、多くのメンタル不調が「職場のストレス」をきっかけに始まることも少なくありません。
「なんだかうまくいかない」「集中できない」「前は楽しかったことが楽しめない」といった感覚に気づいたら、それは心が出しているSOSかもしれません。早めに信頼できる専門家に相談することが、回復への第一歩です。
2. 長く続く痛みについて(総合編)
痛みはとても個人的な体験です。「痛い」と感じているのに、検査では異常がない──そんなケースは心療内科でよくあります。慢性的な頭痛、腹痛、腰痛、胸の痛みなどが続いている場合、痛みの背景に心理的な要因が関わっていることも多いのです。
「痛みが生活そのものになってしまっている」──そんな表現がぴったりくる方もいます。痛みは目に見えないぶん、周囲から理解されづらく、それがまたストレスになってしまいます。
当院では、痛みを“治す”ことに加えて、「痛くても生活できる」「楽しみを感じられる」状態を一緒に探していきます。根本的な改善には、否定的な思考から少しずつ距離をとり、自分に合った痛みとの付き合い方を見つけることが大切です。
3. うつ病と痛みについて
うつ病の方が訴える症状の中に、「身体の痛み」があります。これは決して気のせいではありません。抑うつ気分や意欲低下よりも、まず「頭痛が取れない」「腰がずっと痛い」などの不快感が前に出てくるケースは非常に多いです。
実は、うつ病を引き起こす神経伝達物質の異常が、同時に痛みの知覚にも影響を与えているとされており、心と体が密接に関係していることがわかってきました。
痛みがあるからこそうつ病の回復が遅れる。そんな悪循環を断ち切るために、身体の症状にも丁寧に向き合うことが重要です。
4. 強迫性障害について
「手を何度も洗ってしまう」「ドアを閉めたか気になって何度も確認してしまう」──それが生活に支障をきたしているなら、強迫性障害の可能性があります。
本人はその行動が非合理であると分かっていても、不安を抑えるためにやらずにはいられません。その結果、自分自身が疲弊し、さらに家族も巻き込まれてしまうことがあります。
強迫性障害は心の問題だけではなく、脳の働きにも関係しています。薬物治療や認知行動療法、そして何より「その苦しさは病気のせい」と理解することが、回復への第一歩です。
5. 思春期の不安とその特徴
思春期の子どもたちは、まだ自分の不安をうまく言葉にできません。大人のように「最近不安で…」とは言えず、代わりに腹痛やめまい、動悸といった身体症状で表現されることが多いのです。
子どもが「何か体調が悪い」と言うとき、その背景には学校でのストレス、家庭での葛藤、将来への不安など、心の問題が隠れていることがあります。
大切なのは、すぐに答えを出そうとせず、「一緒に考える姿勢」を持つこと。そうした関わりが、思春期の不安に向き合う力を育てます。
6. 高齢者のうつ病
高齢者のうつ病は、若い人のうつ病とは少し違います。「気分が落ち込む」とは言わずに、「なんだか不安」「眠れない」「体がつらい」といった訴えが多いのが特徴です。
加齢による身体の衰え、配偶者との死別、社会とのつながりの減少など、さまざまな喪失体験がうつ病を引き起こすきっかけになります。特に女性の発症率が高く、見逃されやすい病気の一つです。
気になる症状があれば、早めの相談を。認知症との見分けが難しい場合もありますが、適切な治療で生活の質を大きく改善できます。
7. 高齢者の不眠症
「年をとったら眠れなくなった」とよく言われますが、不眠が続くと日中の活動にも支障が出てきます。不眠にはさまざまな原因があり、単なる加齢だけでは説明できないケースもあります。
生活リズムの乱れ、過剰な昼寝、不安や抑うつ状態など、背景を丁寧に探っていくことが改善のカギ。眠れないこと自体を過度に気にしすぎないことも大切です。
睡眠の質を上げるために、まずは朝起きて光を浴びる、規則正しい食事をとる、日中の活動量を意識する──そんな基本的なところから見直してみましょう。
8. ライフサイクルからみた中高年のこころの危機
中年期になると、「これまでの人生の選択、これでよかったのかな…?」と自分を振り返る機会が増えてきます。健康の問題、子どもの独立、定年後の不安など、人生の変化が一気に押し寄せる時期です。
この時期は、これまでの“当たり前”が揺らぎやすく、うつ状態や仮面うつ、不安障害といった形で心の不調が表れやすいタイミングでもあります。
誰にでも訪れる「折り返し地点」をどう乗り越えていくか。その問いに丁寧に向き合うことが、心の安定と成熟へのステップになるかもしれません。
9. 「脚がむずむずして眠れない…」方へ
「寝ようとすると足がむずむずして眠れない」──そんな症状は、むずむず脚症候群(RLS)と呼ばれるものかもしれません。特に就寝前に、脚の奥で虫が這うような感覚が出てくるのが特徴です。
脚を動かすと軽くなることが多く、睡眠の質が低下し、日中の眠気や疲労感につながることも。原因としては鉄欠乏、腎機能低下、妊娠などが知られています。
気になる方は一度ご相談ください。症状の理解と適切な治療で、夜の悩みはぐっと軽くなります。
10. うつ病に伴う不眠について
不眠はうつ病の代表的な症状の一つです。「寝つけない」「夜中に目が覚める」「朝早く目が覚めてしまう」など、さまざまなパターンがあります。
単なる生活リズムの乱れと見過ごされがちですが、うつ病の発症や再発のサインであることも多く、軽視は禁物です。気分や意欲の改善とあわせて、睡眠の質にもきちんと目を向けることが大切です。
生活習慣の見直しとあわせて、必要に応じてお薬の力を借りながら、少しずつ整えていきましょう。